仲間を探す

Vol.4声を失い、再び発声できるまで。そしてこれから。

60代 男性 喉頭がん

私は5年前に健康診断でがんの疑いがあると言われました。自覚症状が全くなかったので、紹介された病院を受診したのは数か月後でした。そこで医師から喉頭がんであると宣告され、聞くこと全てが最悪な事ばかりでした。思いもしなかった展開に我を忘れてしまい、全くの空白状態に陥り、暫くは身動きできなくなりました。医師から「最善を尽くすので任せてくれ」との頼もしい言葉に、自然に「よろしくお願いします」と答えていました。

様々な検査の結果、喉頭がんのステージⅣで先ず放射線治療で病巣を小さくしてから手術することになりました。放射線治療中は、自分の将来の生活の事や年老いた母と一人娘の事等が心配になり、不眠症になりました。現状ではそれらの解決方法はなく、くよくよせず治療に専念するよう努めました。

約1ヶ月の放射線治療の結果、病巣は小さくなって手術できることになり、10時間以上の難手術も無事に成功しました。1週間ほどして種々の医療用チューブが全て外され、身体を拭いてくれた看護師さんに「ありがとう」と言おうとしたのですが、声が出ません。62年間 何の迷いもなく普通に会話していた声を失ったと実感した瞬間でした。何とも言えない不安や寂しい気持ちに陥りました。

やがて退院日も決まり、医師から喉頭全摘者の食道発声訓練をする場所を聞き、藁をも掴む思いで出向きました。50名ほどの人達が訓練をしており、「必ず声は出ますよ」と言われ希望が湧いて入会しました。食道発声訓練6ヶ月程で一言二言声が出るようになりましたが、その後訓練を続けても進歩出来ずに悩んでいました。生活のためにハローワークに行き、就職活動を始め3~4社の面接を受けましたが、言葉がはっきり聞こえない事が障害になり全てに断られました。

そんな折、新聞で欧米では喉頭全摘出者の90%がシャント手術(音声再建術)で発声でき、日本でもこの手術が出来る病院があることを知りました。また、東京にシャント手術を受けた患者会があることを知り、早速参加し話を聞きました。すると皆さん手術後約1ヶ月程度で、全員発声できるようになり、カラオケ等楽しんでいるとの事でした。

医師に自分もこの手術を出来ないか聞いたところ、「出来る」との事で、1ヶ月待ってシャント手術(音声再建術)を受けました。入院は1週間でした。いよいよ発声の時です。医師から「深呼吸してゆっくり声をだして」と指導を受け、自分の名前と「あ、り、が、と、う」とかすれ声でしたが発声できました。2回目は自分もビックリするほどはっきりした声で飛び上るほどの嬉しさに思わず先生の手を握ってしまいました。

その時以降、生活は一変しました。声を失った4年間は何だったんだろうと思う反面、これから先の人生を楽しく大切に生き抜こうと思いました。少々大袈裟ですが人生再出発したように感じます。職場にも復帰出来て、全てが順風満帆に廻り始めました。

現在同じ病気で苦労している患者さんやご家族の方々には、決して諦めることなく、希望を持ち続ければ今以上の結果が待っていると言い続けたいです。そして残りの人生では、社会に貢献できるような活動に積極的に参加していきたいと思っています。

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