-
がんはなぜ転移するのですか。また、転移を抑える薬というのはないのですか。
-
がんは、遺伝子の傷がもとで、発生します。発がんには、さまざまながん遺伝子やがん抑制遺伝子の異常で生じることが最近、わかってきました。がん細胞は、正常な細胞と異なり、ふえつづけたり、周囲の正常や組織をこわしたり、もともとあった場所から離れた組織や臓器に移動してふえていきます(転移)。
転移は、がん細胞が原発巣から離れ、移動し、血管やリンパ管の中に入り、転移先の臓器内でまた外に出て移動し、そこで生着して増殖するという非常に複雑な過程を経て初めて成立します。従って、がん細胞が転移するためには、がん細胞同士が離れやすくなること、まわりの蛋白質を分解しながら活発に運動すること、途中で死ににくくなることや、転移抑制遺伝子が働かなくなるといった様々な変化の蓄積が必要になります。進展過程では、遺伝子の構造異常や発現異常が起こりやすいため、一部のがん細胞にこれらの変化が徐々に蓄積してきます。そして、これらの変化をすべて獲得したごくごく一部のがん細胞が転移するようになると考えられています。転移を抑えるための薬剤や、転移したがんに治療効果を発揮する薬剤などの研究が行われています。しかし、がん細胞の遊走、生着、増殖などの仕組みは正常の細胞の増殖メカニズムと共通のものも多く、効果的な薬剤の候補の探索やその使用法の開発、副作用の可能性などさまざまな課題があります。