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遺伝子で効く薬と効かない薬が調べられるという記事を読みましたが、どういうことか教えて下さい。
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身体を形作ったり、生命を維持していくための設計図となるものがDNAです。これはアデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)の4つの塩基と呼ばれる物質が長い鎖のように繋がったもので、この塩基の並び方によって全ての情報を伝えます。その中には、実際にタンパク質の設計図、つまり遺伝子である部分、そのタンパク質をどれくらい、いつ、どこで作りなさいという情報を調節している部分などが含まれています。
最近のヒトの全塩基配列を解読するというプロジェクトの中で、個人によって塩基の種類が違っている箇所(一塩基多型;SNPs=スニップス)が数百万から1千万程度存在することが解ってきました。この違いが遺伝子そのものに存在すれば、タンパク質の働き方に個人差が生じたり、また作る量を調節している部分に存在すれば、タンパク質のでき方に個人差ができる可能性が考えられます。同じヒトであっても、顔形や性格が違っているように、身体の内部でも、作られているタンパク質の働き方や、その量のバランスが一人ひとり違っているために、ある病気にかかりやすいとか、薬が効きやすい、効きにくい、副作用が出やすい、出にくいなのどの個人差があると考えられます。
こういった情報を数多く集めてデータベース化することで、同じ抗がん剤でも遺伝子のタイプにより効く場合と効かない場合があることがわかり、遺伝子のタイプに応じた抗がん剤の選択も行われてきています。さらに情報が蓄積されれば、将来は、DNA上のいくつかの場所のスニップスを調べて、その人に合った、無駄な成分は含まず、副作用のない、有効な適量の薬を、佐藤さんには佐藤さん用、田中さんには田中さん用という具合にオーダーメイドで投与できるようになるかも知れません。