がんに関するQ&A

重粒子線治療や陽子線治療は放射線治療とどのように違うのですか。

放射線治療に一般的に使用されているものは、X線やγ線で電磁波の一種です(波長を持った光のようなもの)。これに対し、重粒子線や陽子線、速中性子線は炭素やネオン、陽子、中性子といったものを加速することによって得られるものです。

治療用に使用される従来の放射線は体表面(皮膚)の近くで、最も強く、体の深い部位に進むにつれて、弱くなっていきます。すると、体の深い部位にあるがんを治療しようとすると、その前後にある正常組織にも、強く放射線があたることになり、結果として正常組織が損傷を受けやすくなります。これに対して、重粒子線は体のある深さで最も強くなり、その前後では、かなり弱くなります。これにより、がんを取り囲む、正常組織への影響をより少なくすることができるのです。これが第1の相違点です。(図1参照)

【図1】
図1

第2の相違点は、放射線の性質です。治療効果を示す目安としては、生物学的効果比(RBE)と酸素効果比(OER)があります。RBEはがんに及ぼす作用の大きさを示しOERは、がん細胞の放射線に対する感受性の度合いを示します。従って、RBEは大きいほど、OERは小さいほど効果的なわけですが、重粒子線は通常の放射線に比べ、RBEで約3倍、OERで約2倍となり、効果的にがんを殺すわけです。(図2参照)

【図2】
図2

陽子線は、線量の集中性は重粒子線と同等ですが、RBEで約1~1.1倍でOERはX線ガンマ線とほぼ同じとなります。この性質により、陽子線治療では正常な組織への影響を最小限に抑え、がんの病巣に通常のX線治療より多い線量を集中化することが可能になります。

以上の線量分布の良さ、がんそのものへの高い効果によって、非常に効果的な治療となるのです。

重粒子線治療や陽子線治療は、通常の放射線治療よりも大きな装置が必要になるため、現在日本においては数施設のみで行われています。治療対象としては、肺や肝臓など「実質臓器」と呼ばれる臓器や、ほかの方法では治療がむずかしい部位が対象となっています。なお、まだ臨床試験・先進医療の段階で、保険収載されておらず、誰でもどんながんの状況でも治療できるわけではありません。

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