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Vol.1がんと出会って学んだこと

50代 女性 大腸がん・乳がん

「重い病気にかかるということは、かつてその病む人の人生を導いていた『目的地や海図』を喪失するということである」と言った人がいます。がんの告知は突然でした。何の自覚症状もありませんでした。人間ドックで、精密検査を勧められ、検査の結果「がんです」と言われました。「嘘だ」「夢だ」と思いました。病気を認めたくないと思う気持ちと認めなければならないと思う気持ち…2つの間で気持ちは大きく揺れました。

大腸がんでの入院中、自分から乳がんの検査を受けたいと申し出て、乳がんも見つかりました。2つのがんで、漠然と思い描いていた人生の地図が大きく変わりました。「私」について考えました。生きている以上、やがては誰もが死を迎える。「がん」を告げられたことにより、突然死が身近なものになりました。私の人生は、私が考えていたよりずっと短いかもしれない。その日まで「私」として、どう生きるか、「生き方」を考えるようになりました。やり直しがきかない自分の人生、何か目標をもって、挑戦してみようかなと思うようになりました。

新たな目標のために、若い人たちに混じって勉強をはじめました。ひょっとしたら、志半ばで、病気のために勉強が続けられなくなるかもしれないという不安は常にありました。けれど、その時はその時と思い、目標に向かって進むことで不安に目を向けないようにしていました。

「私の目標」それは、病院の中で、患者さんたちとお話しをすることです。入院中、患者同士が「はなす」「きく」ことで、気持ちが軽くなることに気づきました。みんなそれぞれ不安を抱えている。病気に向きあっているのは私だけではない。気持ちを言葉にすることの大切さ、仲間がいる心強さを感じました。そこから、病院の中に患者同士で、話ができる場所や、お話しを聴いてくれる人がいればいいのにと思うようになりました。

「患者同士が話し合うことはとても力になること」を感じた私は、退院後まもなく患者会に入会しました。「他の人たちは、病気にどのように向き合っているのだろうか」ということを知りたいと思ったからです。生き方や生活上の工夫など、さまざまなことを仲間から学びました。

現在、がん診療連携拠点病院では「患者サロン」が開かれて、患者さんやご家族同士でお話をする場所が設けられるようになりました。私は、「患者サロン」に参加することや、患者会の活動、県のピア・サポーターとしてがん患者さんやご家族と「はなす」こと、「きく」ことをしています。がんと告げられた方やご家族の方のお話しを聴いたり、自分の体験を話したりすることで、それぞれの方が病気とつきあうためのお手伝いができたらと考えています。

がんになったことで、多くの新たな出会いがありました。たくさんの方との関わりに、私が支えられていることにも気づきました。がんはいろいろなことを私に教え、がんにより、充実した人生になったと思っています。「今」を精一杯生きることの大切さ…「今」を生きていることに感謝して、日々過ごしています。

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