Vol.10乳がん体験記 ~揺れた心を落ち着かせたこと~
50代 女性 乳がん
「ここ、しこりがありますね」人間ドッグのマンモグラフィ検査でのこと。その瞬間から心がざわつき、その夜は、まんじりともできませんでした。そうして迎えた朝「検診結果の通知が届くまで2週間。このまま待っていたら、心が壊れてしまう」と、悲壮な覚悟で病院へ電話しました。幸い、すぐに診察していただけるとのことでした。
超音波検査の後「細胞診」とのことだったのですが「組織診」に変更になりました。当時は、がんについての知識は全くなかったのですが、ドクターの話やその場の雰囲気から「乳がん」だと確信しました。
治療が終わった頃、正しい知識を得たいと思い、乳がん講習会に参加しました。その場で正しい知識を得ることができたことも有意義なものでしたが、それ以上に、乳がん体験者同士のおしゃべりは、とても楽しいものでした。思えば、乳がん患者同士のおしゃべりは、その日が初めてのことでした。
「がん」と告知を受けた時、いえ、「要検査」と言われた瞬間から、患者や家族の心は大きく揺れ動きます。また、家族だからこそ、互いを思いやり打ち明けられないことがあると思います。自分では気づかぬうちに、心にためていたものがあったのでしょう。そんな心を私は、あの乳がん講習会の場に、そっと置いてくることができたのかもしれません。帰り道のまるで少女のような軽やかな足取りといったら…。その姿を思い出すたび、笑みがこぼれます。
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